春の山の散歩は、薄曇りが必須条件ですね。 (nya.1601)

春の山

岩清水の次は「りゅうごんさま」に会いに行ってみました。 (2021年3月19日)

 

さてさて、現在私は「アラフィフ」な訳ですが、その半世紀を超える人生で、長らく「趣味は読書」オンリーと自認して生きてきました。

そのため他人様へ自己紹介する際に「趣味は読書です」という度に、「ああ、無趣味な人が仕方なく言うやつですよね、ソレ」と思われているんだろうなぁと、微かな被害妄想を味わってきたのです。(笑)

んがしかし、46才にして乳がんステージ4とがん告知を受け、48才にして「あ?すぐにこの世を卒業しないんじゃ?」と思い至ってブログを始め、自分のがん治療の体験を時系列に書いたものの3カ月程度で書き終えてしまい、ネタに困って『まいにち風太、まいにち田舎』として写真をアップすることを思いつき、その副産物として「だらだら写真を撮りながら、だらだら家の近所を散歩する」という趣味が爆誕しました。

春の山

いやはや、自分ががん告知を受けた時点での想定以上に、この世で「普通の暮らし」が出来る体調に恵まれ、生きる時間を赦されたからこそ、このような趣味が半世紀ぶりに芽生えたのだと思うと、つくづく果報者だと思います。合掌。

お蔭さまでめでたくも「私の趣味は、読書と散歩です」と言えるようになったわけですが、、、冷静に考えて見ると「読書+散歩」という趣味もまた、他人様からすれば「それって無趣味な、、、以下同文」と大差ないことに気付くのでした。(笑)

「じゃぁ、趣味に写真を入れたらいんじゃね?」と思われるかもしれませんが、考えてみてください。

「趣味は写真です」という言葉を聞いた時に思い浮かぶのは、高価なレンズをいくつも装備し、アングルやらシャッタースピードの蘊蓄を持ち合わせたマニアックかつ深遠な「写真道」にまい進している人物像であって、高級カメラは重いからという理由で、安物のデジカメ片手に近所を徘徊し、適当に立ち止まってシャッターを押すまで30秒という人間では決してない筈です。(笑)

春の山 氏神様の磐座

春の山 氏神様の磐座

そして、ここが肝要なのですが、私の趣味は「散歩」であって、ウォーキングでも山歩きでもありません。

がん治療のためのホルモン療法で、強制閉経して以来ついに7年の歳月を「ネバーエンディング・ホットフラッシュ」で過ごしている私にとって、ウォーキングや山歩きは大量の汗が恐ろしいほど流れ落ちて止まらないことを意味するのです。

それにもともと「体育会系の魂」はあるものの、楽な方がもっと好きだからこそ「趣味は読書」オンリーだった訳ですから、私が肉体的精神的に受け入れ可能な限界ラインに「散歩」は位置します。(笑)

春の山

そんな私が、先日ふとした偶然に恵まれてご近所の山の「岩清水」に出会い、見上げた空に龍神さまのような一筋の白い雲を見つけて、「そういえば、この山のふもと、普段お参りしている氏神様の裏山に『りゅうごんさま』があったなぁ」と、連想してしまったのです。

実は私、生まれ落ちた田舎に半世紀住みながら、この『りゅうごんさま』にお会いしたことがありません。

それは、氏神様が隣の集落にあるために機会がなかったからであり、田舎の集落では未だ「神事」は男性中心に行われるため「おなごはお呼びでない」ためであり、何よりも氏神様の裏山を「700メートル」も登らなくてはならないからです。

春の山

「ふむふむ、なにやら『りゅうごんさま』に会いに行くのもいい気がするなぁ」と思うこと数日、「せっかくのプータロー生活、時間はあり余っている」「ネバーエンディング・ホットフラッシュも今の気温なら軽傷で済む」「ニョロニョロが怖いから、今年のラストチャンスは今」と、好条件が整っていることに思い至り、逡巡を吹き飛ばしてくれました。

そして「屋上屋を架す」の好条件の「薄曇りのお天気」が加わり、ついに『りゅうごんさま』へ会いに行くため、ようやく重い腰が上がった次第です。(笑)

神社仏閣、お墓参りが好きな私が、今まで『りゅうごんさま』に会いに行こうと思わなかったことに不思議の念を覚えましたし、同じ田舎に半世紀暮らした今になって、『りゅうごんさま』に会いに行くタイミングが訪れたことにも不思議の念が湧きました。

これが「ご縁」というものなのでしょう。

春の山

春の山

さて、この『りゅうごんさま』、「竜権様」という字も当てられ「竜の権現様」の略したもののようです。

戦前までは、日照りの時にこの『りゅうごんさま』に雨乞いの祭祀を行った記録もあるようで、現役の神さまです。

氏神様は、先日「岩清水」に出会った山の中腹から現在の場所に遷移されたのが嘉吉元年(1441年)とされ、すぐ近くに磐座もありますから、近くに渓流もないのに水が湧く不思議に神さまを感じ、古代から龍神様を祀り、時代が下って神仏習合で『りゅうごんさま』となられたのでしょう。

春の山

春の山

案の定、山を登り始めて10分もすると、とめどなく汗が流れ始めましたが、お彼岸近くの春の日差しは薄雲で和らげられ、吹く風は未だ冷たさを感じるくらいに清新でした。

山の草や木々は芽吹きの季節の直前、少し寂しくもありましたが、山道の脇で固い蕾をのぞかせている山つつじが赤紫の花を咲かせる頃では、私の体重を押し上げる体力が足りません。(笑)

『りゅうごんさま』が「こんなに好条件を揃えてやったんだから、さっさと登って来いよ」と、息を切らして立ち止まり、恨みがましくどこまでも続く坂道を見上げてる私に、溜息をこぼしておられるのが見えるようでした。(笑)

りゅうごんさま

りゅうごんさま

何とか『りゅうごんさま』にお会いすることが出来ました。

氏神様自体が山のふもとの小高い場所にありますから、そこから700メートル登れば、私が暮らす田舎と水田が続く平野を木々の間から見下ろすことができます。

祭祀が盛んだった頃は、今は視界を塞いでいる木々の手入れもされていたことでしょうから、龍神様が下界で農作業に精を出す村人を眺めるのに適した場所だと思いました。

すぐ近くの山には前方後円墳も横穴式古墳群もありますし、奈良時代に創建されたお寺の廃寺跡や条里水田跡もありますから、『りゅうごんさま』になったつもりで古代の風景を想像するのも楽しかったです。

りゅうごんさま

りゅうごんさま

一度は手のひらからこぼれ落ちたかに思えた「普通の暮らし」を続けられているのも、天地人の恵みを存分にいただけるこの土地に生きることを赦されているからこそです。

こんなに近く、こんなに長く住み見ながら、これまで『りゅうごんさま』に足を運ぼうとしなかった不敬をお詫びして、豊かで穏やかで美しい場所に住まわせていただいていることに感謝をしました。

そして、そんな私なのに、意志さえあれば何度でも足を運べる場所に住みながらも、「また来ますね」と約束できない私をお許しくださいと、重ねてお詫びしました。(笑)

りゅうごんさま

りゅうごんさま

『りゅうごんさま』の近くに姫榊(ヒサカキ)の花が咲いていて、山道を登っている時にもずっと香っていた甘い臭いはこれだったのかと思い、お彼岸前の浅い春の山にもまた、一期一会の楽しみがあるのだと知りました。

お香は本来、天界の方々をもてなすためのものと思えば、姫榊の甘い狩りに包まれて『りゅうごんさま』に生まれて初めてお会いするのが「今」であったことが、「相応しい秋(とき)」を選んで導かれたようにも思えます。

大病を得て、小康を保って日々の営みを慈しむことが出来るなら果報者と思い生きてきましたが、自分が半世紀を超えて住まう土地の中に、未だ「初めて」の心弾む偶然が潜んでいることの幸せを実感した『りゅうごんさま』でした。合掌。

(おしまい)

追記、山を下りた私が被っていた帽子を脱いだ時、丸く汗染みが出来ていたことをご報告し、体力がなく、体重が有り余っている人の「山歩き」のベストシーズンは、早春が晩秋であることを進言いたします。

姫榊(ヒサカキ)

姫榊(ヒサカキ)

 

 

 

 

 

 

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春の山の散歩は、薄曇りが必須条件ですね。 (nya.1601)” に対して2件のコメントがあります。

  1. sizu より:

    WAONーーーーーーーー!
    700mりゅうごんさまに登られた?!
    驚きました
    岩清水に行った時、見られた龍の様な雲現象・・・

    人って、何かの不思議な事に気力がもたらされる時、あるのでしょうね
    その{りゅうごんさま}昔昔の人が、何らかの形で感謝か祈りの念を込めたものでしょうかねぇ。
    ・・・疲れたことでしょう。風太君付かず離れず付いていたのか、とっくに道は
    知っていたか、どうなんでしょうね。

    1. ふるゆら より:

      ははは、今回の写真の猫は、風太ではなく神社の近くの家の猫です。

      かなり山の中まで遠征して縄張りにしているようで、私という不審者に警戒MAXでした。(笑)

      りゅうごんさまは、鬼が笑うかもしれませんが体調や気温や気候からして「今年のラストチャンス」と思って登りました。

      四季が巡り冬の気配が漂う頃、その時、私が今のままプータロー生活を送っているのか、山歩きをする気力が湧くのか、「今」の延長線上に自分があると想定することは誰にとっても危ういですよね。

      だから「今」に生きるしかないのだと思えた「山歩き」でした。合掌。

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