ふるゆらの好きな本たち『風が強く吹いている』三浦しおん著 (nya.866)
何度でも読み返し、その度に「風が強く吹く」から好きです。(笑) (2019年3月15日)
私は「風」が好きなのです。
、、、というより、空気が動かない空間にいることが好きではないのです。
比較的温暖な土地に暮らしているからこそ可能なこととはいえ、私の自室の窓は1年中24時間春夏秋冬、常に20cmくらい開いています。
私が愛煙家であることも理由の一つではありますが、真冬に寝る直前に暖房を切り、鼻先が冷たくなっても構わないくらい「絶対に」窓を閉めません。
そよ風も好きですが、強風も好きで、中学生くらいまで、母の運転する車の助手席に座り、犬のように窓から顔を出して強風を浴びていました。
今思っても、「それ」を止めることなく放置し続けた母親も大概です、、、。(笑)
台風が近付いて強風が吹き始めると、ついつい家の外に出て、強風を浴びて楽しんでしまいます。
内臓を吹き飛ばしてしまいそうな風を受けると、なぜだか「がははははぁ」と笑いたくなるくらいテンションが上がります。
・・・と、このように無性に風が好きな私が、今日紹介する『風が強く吹いている』三浦しおん著に手を伸ばしたことは、至極自然なことと言えるでしょう。(笑)
著者の三浦しおんさんは、2006年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞、2012年『舟を編む』で本屋大賞を受賞され、原作としてテレビや映画で映像化もされておられる方です。
『風が強く吹いている』もまた、
2006年9月22日に新潮社より刊行。新潮文庫より文庫版も刊行されている。
2007年の漫画化、ラジオドラマ化を皮切りに、2009年1月に舞台化、同年10月31日に実写映画化、2018年にテレビアニメ化されるなど、各メディアで取り上げられている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A2%A8%E3%81%8C%E5%BC%B7%E3%81%8F%E5%90%B9%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B
メジャーな作品ですので、ご存知の方も多いことと思います。
おまけに小説のテーマが「箱根駅伝」です。
スポーツ観戦大好きな私にはピタッとハマりました。
『風が強く吹いている』の背表紙には、
箱根駅伝を走りたい――そんな灰二の想いが、天才ランナー走と出会って動き出す。「駅伝」って何? 走るってどういうことなんだ? 十人の個性あふれるメンバーが、長距離を走ること(=生きること)に夢中で突き進む。自分の限界に挑戦し、ゴールを目指して襷を繋ぐことで、仲間と繋がっていく……風を感じて、走れ! 「速く」ではなく「強く」――純度100パーセントの疾走青春小説。
https://www.shinchosha.co.jp/book/116758/
とあります。
ふふふふふ、本当に、何度読み返しても、『純度100パーセントの疾走青春小説』という謳い文句に偽りはありません。
必ず読後、強風を全身に浴びて「がははははぁ」と笑ってしまう感覚によく似た感覚を覚え、「ああ、気持ち良かった」と、呟いてしまいます。(笑)
『風が強く吹いている』のテーマは、陸上長距離、箱根駅伝で間違いはないのですが、いわゆる「スポーツ小説」というよりは、「走ること=生きること」と置き換えて読むことが出来、青春を遥か以前に終えた人間にとっても、十分に味わえるものになっています。
背表紙の『風を感じて、走れ! 「速く」ではなく「強く」』の「走れ!」を「生きろ!」としてみてください、胸に沁みます。
速く、要領よく、スマートに、大きな成果を得て生きている人を世の中は称賛しますが、のろのろと、滑稽で、不器用に、大した成果を得ることなく生きている人の中に「強さ」があるなら、それで十分ではないかと、それでいい、それがいいんだと思わせてくれます。
箱根駅伝は10人の襷を繋いで往路と復路を走るのですが、チームエントリーは16名以内で、区間エントリーのチーム編成は正選手10名と補欠選手6名以内というルールがあります。
主人公たちが走る、陸上が盛んではない寛政大学チームは、10人だけで箱根駅伝に挑みます。
しかもメンバー10人は、大学の近くの今にも崩れそうな「賄いつき格安学生寮、青竹荘」に住む住人で、陸上経験者は3人のみ、後は陸上未経験者です。
ボロボロの青竹荘には、入口にボロボロの「青竹荘」と書かれた看板あり、よぉ~く見るとその看板に「寛政大学陸上競技部錬成所」と書かれていて、箱根駅伝に参加しないなら退去を迫られるというペテンによって、無理やり巻き込まれていくというストーリーです。
物語の後半は、メンバーそれぞれが箱根駅伝を走りながら、それぞれの想いを独白しながら物語が進みます。
十人十様のバックボーンを持ち、十人十様の心が襷を繋いでいくから、面白いのです。
※苦しくてもまえに進む力。自分との戦いに挑み続ける勇気。目に見える記録ではなく、自分の限界をさらに超えていくための粘り。
※そしてわかったのは無意味なのも悪くない、ということだ。綺麗事を言うつもりはない。走るからには、やはり勝たなければならないのだ。だが、勝利の形はさまざまだ。なにも、参加者のなかで一番いいタイムを出すことばかりでが勝ちではない。生きるうえでの勝利の形など、どこにも明確に用意されていないのと同じように。
※「努力ですべてがなんとかなると思うのは、傲慢だということだな」
王子をなだめ、励ますように清瀬は言った。自分自身に言いきかせる言葉でもあった。
「陸上はそれほど甘くない。目指すべき場所はひとつじゃないさ」
物理的に同じ道を走っても、たどりつく場所はそれぞれちがう。どこかにある自分のためのゴール地点を、探して走る。考え、迷い、まちがえてはやり直す。
狭い場所に押し込められているように窮屈な時、澱んだ空気の中で息苦しい時、物事に真摯に向き合う感覚を忘れかけた時、一陣の強い風に吹かれてみたくなったら、読んでみてください。
蛇足ながら、ウィキペディアに紹介されている「ストーリー」を紹介します。
自らが引き起こした不祥事により、部活を辞めることを余儀なくされた、天才ランナー・蔵原走(カケル)は、夜道を走っていた。自らの脚を万引きの道具として活かし、逃れるために。そこに偶然通りかかった、かつて強豪校で走っていた手負いのランナー・清瀬灰二(ハイジ)は、その走りに魅了され、自転車でカケルを追いかけ、こう問う。「走るの好きか」と――。
その問いに脚を止めたカケルに対し、ハイジは、自らが学生の食事を作り生活面を管理している、格安学生寮の竹青荘(通称・アオタケ)に勧誘する。他に行くあてもなく、カケルが向かったアオタケでは、漫画オタクの美形、運動経験のない黒人、モテることを夢見る瓜二つの双子、争いごととは無縁な好青年、司法試験合格済みの秀才、ヘビースモーカーな25歳、就活に勤しむクイズ王と、個性豊かな面々がそれぞれの大学生活を謳歌していた。
そんな彼らが集う、カケルの歓迎会で、ハイジは高らかに宣言する。「ここにいる10人で箱根駅伝を目指す」と。実はアオタケは、ハイジが箱根駅伝を目指すための「寛政大学・陸上競技部錬成所」であったのだ。騙された、と抗議をする住人に対し、ハイジは彼らの心理を、時に巧みに、時に強引に掌握し、箱根駅伝を本気で目指すために突き進んでいった。
アオタケの住人は、大半が陸上素人ではあったが、トレーニングをしていくうちに各々の長所を伸ばし徐々に力をつけていく。それに対し、カケルは当初なし崩しに付き合ってはいたものの、箱根駅伝出場については本気に捉えておらず、住人との温度差を埋めきれずにいた。
そして初めての予選会で、大学陸上長距離界のトップ・藤岡一真の走りを見せつけられた上、箱根への道のりの険しさを突きつけられ、焦って住人と衝突するカケル。そんなカケルに対し、ハイジはある言葉を投げかける。
こうして幾多の衝突を繰り返しながらも、住人たちは絆を育み成長していく。果たしてアオタケの10人は、箱根駅伝に出場し、天下の険に辿り着くことはできるのか――。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A2%A8%E3%81%8C%E5%BC%B7%E3%81%8F%E5%90%B9%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B
次は
です。
三浦しおん、大好きです。
上橋菜穂子、大好物です。
好きな人が多い作家ですよねー
でも好意を持っている(異性的な感情では無いですよ…笑)
ふるゆらさんと同じだと、なんか嬉しいな~
ただ。。きょ。強風は。。
子供の頃、強風を理由に学校をさっぼていました・・
うーん、理由というか本当に苦手だったな~残念!
そーですか、ジルさんと「好物」が重なっているのですね♪
私の個人的な「偏見」として、日本女性の紡ぐ物語は「地に足がつく」感があって、読み進めても違和感がないところが秀逸だなと思っています。
私は、強風と雷と日陰から日なたに出た時にホワイトアウトするのが大好きなんです。(笑)
たぶん、「ここではないどこかへ」行ってしまいそうな感がミソのように思います♪