アゲハ蝶「くら」と草むしりのひと時 (nya.1692)
翅(はね)を乾かすアゲハ蝶と同時進行の草むしり、、、 (2021年6月18日)
私は普段「固い意志」で見て見ぬ振りをしていることがいくつかあり、その一つが自室の北側の窓の目の前に広がる「畑の草」があります。
その畑は、「畑が青くなる」ことを世間体の悪い恥と感じ、草ぼうぼうに厳しい「村の年寄りたち」の目に留まらない絶好の場所にあり、好きなだけ見て見ぬ振りが出来るのです。
しかし、物には限度があり、あまり放置していると、同じく自室の北側に設置してあるエアコンの室外機を覆い隠してしまいます。(嘆息)
ですので夏に2回ほど、室外機の排気が妨げられてエアコンを修理することになった場合の修理代金の請求に怯え、渋々「条件が整った午前中」に意を決して草むしりをします。
その条件とは、①気温が比較的低い、②薄曇り、③1日前にたっぷり雨が降り地面が柔らかくなっている、であり、この3条件が整い、草ぼうぼうが臨界点を越えた時、私は重い重い腰を上げて草むしりをします。
そして先日、つばの広い100均の帽子、保冷剤を仕込んだタオルマフラー、長袖長ズボン長靴という完全武装で、私は草むしりをしました。
その畑は、私の「がんマラソン」と同時に植えた枇杷の木が数本あり、「枇杷の葉こんにゃく温湿布」に貢献してくれるまであと数年、苗木から育てているため、まだ樹高1メートルほどの幼木です。
かわいい枇杷の木さんたちが、同じくらいの高さになった草に取り囲まれている姿に胸が痛みます。(笑)
実のところ、私は単純作業が嫌いではない「お百姓DNA」を持つ人間です。
「梅仕事」も「枇杷仕事」もそうですが、頭を空っぽにして手だけを動かす時間、結構好きです。
だから覚悟を決めて始めてしまえば、草むしりも苦ではないのですが、如何せん、私の「背中が痛い」体と草むしりの相性が最悪なのです。(嘆息)
そんなこんなで「いざ、草むしり。レスキュー・枇杷の木さん」と意気込んで初めて早々、立ち上がった拍子に帽子のつばが枇杷の木の枝にからまりました。
帽子を拾い、何気に地面を見ると、そこに不思議な色彩、不思議な形状の物体がありました。
「・・・・・ん?」
よく見るとそれは、さなぎから羽化したばかりのアゲハ蝶、私の帽子が災いして、地面に転がっているではありませんか。
さなぎの中で折りたたまれていたままの翅(はね)の形のままで地面に転がっている姿は、蝶々というより不思議な物体です。
「ありゃりゃ、大変、悪いことしたなぁ」
私は急いでその柔らかな物体をそっと掬い上げ、目についた枇杷の木の枝に掴まらせました。
アゲハ蝶も、華麗に蝶に変身しようとした途端に地面に叩き落とされるという不運、さぞや肝を冷やしたことでしょう。
「気が付かずに踏まなくて本当に良かった」心底安堵しました。
長く田舎に住んでいる私ですが、羽化したてのアゲハ蝶を目撃したのは生まれて初めてです。
慌ててカメラで激写したのが2枚目の写真です。
慌てていたのですっかりピンボケですが、翅(はね)があらぬ方向に屈折していて「不思議な物体」感は伝わるかと思います。(笑)
しばらく心配で見守っていると、3分ほどで翅(はね)はきれいに広がってので安心しました。
掬い上げたアゲハ蝶はあまりにも柔らかかったので、どこか痛めてしまったのではないかとハラハラしていたのです。
んがしかし、アゲハ蝶の苦難はまだ続きます。
この日は割と強い風が吹いていて、汗をかいて草むしりをする私には幸運ですが、当初の予定とは異なる枝にぶら下がることになったアゲハ蝶にとっては不運でした。
体の何倍も大きな柔らかく湿った翅(はね)が、風に煽られてすごいことになっています。
ピンと張った美しい翅(はね)を羽ばたかせているアゲハ蝶しか見たことがなかったのですが、乾く前の翅(はね)って、あんなに曲がるものなんですね。
加害者の私が見守るしか出来ないことが、心苦しいほどにグネグネです。
すっかり感情移入した私は、枇杷の木のある畑が倉の横にあることから、アゲハ蝶に「くら」と命名し、「くら、頑張れ」と励まし続けました。
・・・?・・・、おっとイケナイ、私は草むしりをしにココに来たのでした。(笑)
草むしり開始早々に「くら」に出会ってしまったため、草むしりが1mmも進んでいません。
私は時折り「くら」をチェックしつつ、草むしりを再開しました。
「くら」の苦労を思えば、私の草むしりという苦行も大したことではありません。
それからは、「くら」の羽化完成と私の草むしりが同時進行でした。
草むしりをしながら時折り立ち上がって、「立ち眩み」で気が遠くなりながらもその度に「くら」がまだそこにいることを何度も確かめました。
私の草むしりは1時間ほどで終了し、その頃には「くら」の翅(はね)もずいぶん乾きました。
もう「不思議な物体」ではなく、どこに出しても恥ずかしくない立派なアゲハ蝶です。パチパチパチ。
「くら」が見事に「巣立ち?」するまで見届けたかったのですが、限界です。
タオルマフラーに仕込んだ保冷剤もすっかり溶けてぬるくなり、汗だく&疲労困憊の私は、這う這うの体で自室の扇風機の前に退散しました。
最後に「くら」に、「お互いいろいろ大変だけど、頑張って生きようね」とお別れの挨拶をしました。
「くら」の今後に幸多からんことを祈ります。合掌。
(おしまい)
揚羽蝶 くら君!
羽化したてのフニャフニャ羽!ふーん、そんなふうになっているのですねぇーーー!
私も初めて見せて頂きました
良くまぁ同時に くら君!見つけましたね
初めの写真が立派な アゲハ蝶でしたから、くら君!大事なかって
何より! ふるゆらさんの周囲は 童話が書けますよ!!
文がたつから 書いてみたらどうでしょう。
はい、羽化したての蝶々は、想像の数倍柔らかかったです。(笑)
まさに『手のひらを太陽に』の通り、「僕らはみんな生きている♪」です。
「くら」、踏まなくてほんとぉぉによかったです。
滅多にしない草むしり、滅多に見ないアゲハ蝶の羽化の瞬間、ものすごい低確率で出会った「くら」、ほんとに童話のようなひと時でした。